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司馬遼太郎『最後の将軍』

空き家から発掘された書物、司馬遼太郎の『最後の将軍』を読んでみました。

最後の将軍-表紙

最後の将軍-奥付

 

司馬遼太郎の『最後の将軍』ですが、これは本のタイトルで、中身のタイトルは『最後の将軍ー徳川慶喜ー』になってるんですね。

さすがの私も司馬遼太郎は存じておりまして、子どものころは斎藤道三を題材とした『国盗り物語』、黒田官兵衛を題材とした『播磨灘物語』などを読みました。

本が好きというよりは、戦国時代が好きだったもので、その流れで読んだのですね。

そもそもなぜ戦国時代に興味があったのかというと、それはシミュレーションゲーム信長の野望」にハマったからでした。

 

しかし、小学生には難しすぎたのか、幕末にはあまり興味を持ちませんでした。

だから、司馬遼太郎の代表作と言える『竜馬がゆく』『坂の上の雲』『燃えよ剣』などは全く読んでいません。

今回は、空き家で50年近く埋もれていた末、こうして出会えたという縁もあり、読んでみることにしたのでした。

 

司馬遼太郎の作品は大衆への影響がとても大きくて、史実の人物の評価が、司馬遼太郎の作品の中の人物像に左右されてしまうというのを聞いたことがあります。

徳川慶喜は、教養のレベルの日本史だと、

 

・言うことコロコロ変わる

・決戦直前で自分だけ逃げる

・あっさり降伏する

 

みたいな認識だったのですが、この作品の中の徳川慶喜は、

 

・嘘も方便の大役者で雄弁家

・破滅的な内乱を回避するトリックプレー

タイムリープしているぐらい先が見えすぎた

 

という感じに描かれています。果たして本当はどっちだったか、というのを考えるのも楽しいですが、それはそれとして、ただ物語として読んでおもしろいものでした。

大政奉還を幕府役人に説明するときの慶喜の言葉で、

「現状を続けよ、と願う者もあろう。しかしそれはなしがたいことである。現状をつづけるとなれば、政権をなげうつ以上の改革が必要である。しかし、これにも限度がある。たとえばいまのような旗本も大名も廃さねばなにもできぬが、しかしこれはわれとわが身で骨や臓腑を剔出(てきしゅつ)し、切りきざむようなもので、とうていできぬ」

というものがありますが、これ今の話?と思うほどいいセリフでした。

明治維新って、もしかしてまだ終わっていないのではないか、いつか総括しないといけないのではないか、とかなんとか。

 

あと、表紙イラストが素敵だと思いました。風間完という方のものだそうです。